アカデミズムの巨匠〜ブグロー

Posted on 2020-05-13 by nakajima

ブグローという画家をご存知でしょうか？
名前は知らなくとも、某ファミレスでその絵をみかけた方も多いのではないかと思います。

19世紀フランスのアカデミズム絵画を代表する超大物画家ウィリアム・ブグロー（Adolphe William Bouguereau, 1825 – 1905）…。

1876年に美術アカデミー会員となり、1881年にはサロン（官展）絵画部門の責任者に選出され、作品は古典古代の神話や、寓意画、肖像画など多岐にわたり、その生涯に800点以上の作品を残したと言われています。

At the Edge of the Brook_(1875) 出典：commons.wikimedia.org

L’Amour_et_Psych_(1899) 出典：commons.wikimedia.org

A Girl Defending Herself against Eros 出典：commons.wikimedia.org

当時のフランス芸術アカデミー（国立の芸術機関）の規範に沿い、技巧を重視し、理論的な画面構成を行う伝統的保守的なスタイルは美術史においてアカデミズムと呼ばれています。
系統的にはアングルに代表される新古典主義の流れですが、それは当時の芸術の本流でした。

しかし、19世紀後半のフランス絵画といって私達が真っ先に連想するのは…そうです、マネ、セザンヌ、ルノワールといった印象派でしょう。
印象派の画家たちは、アカデミーの保守的な理論や規則を否定するような作品を描いていました。

first kiss 出典：commons.wikimedia.org

The Birth of Venus (1879) 出典：commons.wikimedia.org

A Girl Defending Herself against Eros 出典：commons.wikimedia.org

当時、サロン（官展）は画家が成功するための場所となっていたのですが、ブグローにとって印象派の画家が描いた作品は下書き以下であって、決して美として認めることなどできなかったようです。
アカデミーの頂点でサロン審査員であった彼は、印象派の応募作品をガンガン落選させ続けたとのこと。

明るく色彩に富み、自由で気ままな筆使いの印象派のスタイルは、しだいにモダンライフの同義語になり、絵画の新しい歴史を作って行く事になるのですが、反面20世紀初頭からブグローとその作品は評価が落ちてゆき、人々の記憶からその名はフェイドアウトしていきました。
当時の仏画壇の重鎮であったにも関わらず、今日の知名度はあまり高くないのは、こうした背景があったようです。