手ぶくろを買いに

Posted on 2023-01-21 by nakajima

紙芝居風を見るように楽しめる、童話「手袋を買いに」の動画です。
優しい朗読の声、静かに流れるピアノとフルートのBGM、静かな冬の夜の世界に誘ってくれる影絵(紙切り)…。
新美南吉(にいみなんきち)氏の童話を彩るのは、全て地方の作家によるオリジナル作品です。

朗読は、劇団やラジオ局で活動中のヒビカミカさん。
紙芝居の紙切りは、アーティストのKイノマタさん。
BGMは全編、土屋信さん作曲のオリジナル楽曲。
素敵なフルートの演奏は、大場えり子さん。
そしてピアノ演奏は、作曲を担当した土屋信さん。

ことの始まりは、土屋さんが営む喫茶店(宮城県大崎市)をミカさんが訪れ「私が朗読するので、曲をつけてくれない?」と言う会話から始まったらしいです。

門外漢の私がリハーサルをのぞき見たり、ラジオでオンエアされたその作品を聴いたりしてるうちに、どうやら動画計画も進行していたようです。

ピアノと朗読のリハーサルを見学する私(手前)
撮影はフルート奏者えり子さん♫

 

童話「手袋を買いに」は有名な童話なので、ご存知の方も多いと思いますが、そのさわりをKイノマタさんの紙切り作品の一部と一緒にご覧ください。

 

 

手袋を買いに(新美南吉作)

寒い冬が北方から、狐の親子の棲んでいる森へもやってきました。

ある朝、洞穴から子供の狐が出ようとしましたが、

「あっ。」と叫んで目を抑えながら、母さん、狐のところへころげて来ました。

母ちゃん、目に何か刺さった、抜いて頂戴、早く早く」と言いました。

母さん狐がびっくりして、あわてふためきながら、目を抑えている子供の手を恐る恐るとりのけてみましたが、何も刺さってはいませんでした。

母さん狐は、洞穴の入口から外へ出て初めてわけが分かりました。

昨夜のうちに、真白な雪がどっさり降ったのです。

その雪の上からお陽さまがキラキラと照らしていたので、雪は眩しいほど反射していたのです。

雪を知らなかった子供の狐は、あまり強い反射を受けたので、目に何か刺さったと思ったのでした。

子供の狐は遊びに行きました。

真綿のように柔らかい雪の上を駈け回ると、雪の粉が、しぶきのように飛び散って、小さい虹がすっと映るのでした。

すると、突然、うしろで、

「どたどた、ざーっ。」とものすごい音がして、パン粉のような粉雪が、ふわーっと子狐におっかぶさって来ました。

子狐はびっくりして、雪の中に転がるようにして十メートルも向こうへ逃げました。

何んだろうと思って振り返ってみましたが何も言いませんでした。

それは樅の枝から雪がなだれ落ちたのでした。

まだ枝と枝の間から白い絹絲のように雪がこぼれていました。

まもなく洞穴へ帰ってきた子狐は、

「お母ちゃん、お手てが冷たい、お手てがちんちんする。」と言って、濡れて牡丹色になった両手を母さん狐の前に差し出しました。

母さん狐は、はーーっと息をふっかけて、ぬくとい母さんの手でやんわり包んでやりながら、

「もうすぐ暖かくなるよ、雪を触ると、すぐ暖かくなるもんだよ。」と言いましたが、かあいい坊やの手に霜焼ができてはかわいそうだから、夜になったら、街まで行って、坊やのお手てに合うような毛絲の手袋を買ってやろうと思いました。

……続きは、動画をごらんください。

 

新美南吉の文学と戦争意識に関しては、さまざまな考察があるようです。
期せずしてウクライナでの紛争が全く沈静化の兆しがない昨今、心が温まり考えさせられる作品と感じる方もいらっしゃるのではないでしょうか。

たくさんのお客さんにを前にしてのお披露目会
(船形連峰薬来山の麓、コンツェルト・ハウスにて)
2022/11/6

 

 

 

 


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