水木しげるが見たヒットラーの真実

Posted on 2017-07-23 by nakajima

妖怪画家として知られる水木しげる氏は戦争の悲惨さを伝え続けた漫画家でもあります。
氏が49歳から描き始めた作品に「ヒットラー」がありますが、当時は革新的な漫画誌「ガロ」が学生に絶大な人気があった頃です。
同誌は階級の矛盾や闘争を描いたカムイ伝を柱としてましたが、水木氏が描く独特の社会風刺がきいた作品群もまた同誌の看板作品でした。

氏は1971年(昭和46年)『週刊漫画サンデー』の5月15日号より「20世紀の狂気!!ヒットラー」として作品を連載することになります。

今回は、当ギャラリー主宰・川嶋によるエッセイ「水木しげるが見たヒットラーの真実」をご紹介します。

水木しげるが見たヒットラーの真実

水木しげるさんの『劇画ヒットラー』を読み終わりました。力作です。「ヒットラーは希代の英雄でも狂気の独裁者でもないー水木しげるが見たヒットラーとは?」という帯のコピーのとおりでした。最初はドイツ国民のほとんどが軽蔑していたヒットラー、ナチスがなぜ?あれよあれよという間に頂点に上りつめたのか。。。今、そしてこれから決して起こり得ないことではないと感じた読後です。

ドイツは第二次世界大戦やホロコーストの原因をすべてナチスに帰着させたうえで、徹底した国家謝罪と賠償により戦後の欧米社会に受け入れられました。

ナチスはヒットラーと同義語にされ、ヒットラーはさらに悪魔とみなされ、人間としてのヒットラーは想像しがたいものになっています。

しかしこの本を読むと、ヒットラーはもともとチンピラ、ルンペン、失意の芸術青年という、どこにでもいるような人間であったことがわかります。

取り巻きも似たようなもので、養鶏業のヒムラー、モルヒネ中毒者ゲーリング、薬屋シュトラッサー、錠前屋のドレクスラーなど、これまたどこにでもいるような人間たちでした。

 

続きはこちらからご覧下さい。
ノボ村長の開拓日誌
http://d.hatena.ne.jp/kawasimanobuo/20170716/1500191057

 

劇画ヒットラー(水木しげる 実業之日本社刊)より

劇画ヒットラー(水木しげる 実業之日本社刊)より

 

 

劇画ヒットラー(水木しげる 実業之日本社刊)より

劇画ヒットラー(水木しげる 実業之日本社刊)より

 

水木氏は「ヒットラー」を描いていた1971年夏、戦友と共に、実に26年ぶりにニューブリテン島を再訪します。
現地でトライ族の歓迎を受け、終戦当時少年だったトペトロ氏と再会。(そのとき彼は酋長になっていたといいます。)

21歳で召集され、ニューブリテン島ラバウルで左腕を失った水木氏…復員後は紙芝居作家として、そして貸本漫画家生活へ…。
長い極貧状態から、超多忙の人気作家へ上り詰めた水木氏…。

ニューブリテン島で久しぶりに牧歌的な生活を見るにつれて自身のペースを失っていた事に気付かされたといいます。

そして2年後の1973年、水木氏本人が最も思い出深いと語る、自身の体験をもとにした戦記漫画『総員玉砕せよ!』を執筆。
2015年(平成27年)93歳で亡くなるまで独自の表現世界を切り開きつづける事になります。

 

 

 


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