ペイネとやなせさん

Posted on 2019-08-19 by nakajima

レイモン・ペイネ(Raymond Jean Peynet 1908年〜1999年)は、世界的に有名なフランスのアーティストで、彼の描くステキなまんがの世界は日本でも根強い人気があります。

私が初めて彼を知ったのは、中学時代(1966年頃)出版されたやなせたかしさん(柳瀬 嵩 1919年〜2013年)の著書からでした。
当時のやなせさんは漫画家なのか、詩人なのか、画家なのか?…多感な(?)時期の私にとって、なんかわからん不思議な魅力の、でもとても身近な作家に見えたものでした。

彼の著書の一冊に「私の好きな漫画家」としてペイネの絵が1枚だけ紹介されていたのです。

なんともしゃれた画風で、私は毎日その絵を眺めていたものでした。
当時、ペイネは日本で特に人気があった訳でもなく、著書が出版されたという話も聞かないまま時は過ぎて行きました。(実はそうではなく、私が知らなかっただけだったと、後でわかったんですが……涙!)

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Raymond Jean Peynet ふたりのポケットブックより

 

それから7~8年後、立ち寄った北海道のとある喫茶店、「あれ?」ふと目に入ったのは…あのペイネの本でした。
品があって、詩情があって、ちょっとセクシーで、ユーモラスでかわいい…恋人をテーマにした4冊組のシリーズまんが…。

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Raymond Jean Peynet ふたりのポケットブックより

 

突然、懐かしい友人に会ったような気がして、即、店主に「これ、ください!!」と私。
ラッキーな事にその場で譲っていただく事ができました。

(もう早いもので、あれから40年以上たっています。そして今、ほんの少しですが、本の抜粋を当サイトで紹介させていただく事にしました。)

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Raymond Jean Peynet ふたりのポケットブックより

ペイネは「恋人たち」というテーマで多くの作品を作ってきましたが、これらの作品(4冊)は初期のものと思われます。

ペイネの恋人達…。私が購入した当初は「〈ふたり〉のほん」とネーミングされ、ケースには4冊の本が入っていた。

ペイネの恋人達…。私が購入した当初は「〈ふたり〉のほん」とネーミングされ、ケースには4冊の本が入っていた。

■ふたりのポケットブック(original:London 1954)
■ふたりのベッドサイドブック(original:London 1956)
■ふたりのおくりもの(original:London 1958)
■ふたりのウィークエンド(original:London 1959)

以上4冊、1965年に日本でも初版が出ていたようです。
でも更に調べると、1960年、詩人の串田孫一氏が、ペイネの作品「<ふたり>のウィークエンド」(みすず書房)を翻訳したとあるので、多分日本での最初の出版はその時期なのかもしれません。かなり早いですね!

(従って、私がペイネをやなせさんの著書で初めて知った1966年頃には、実はペイネ作品、日本で既に出版されていたんですね。
田舎もんの私は知らなかった…?)

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Raymond Jean Peynet ふたりのポケットブックより

 

 

ちなみに前述のやなせたかしさんですが、私がやなせさんを知ったのは1966年頃に出版された「愛する歌」という本がきっかけだったように思います。

やなせさんによる、詩なのか歌謡曲なのかエッセイなのか解らないけれど、なんか不思議な魅力の文章にメルヘンチックな挿絵が添えてありました。

当時、まんが家としては売れてなかったらしいですが、独特のやなせワールドはとても新鮮だった事を覚えています。

(やなせさんは当時、若い女のコの心をとらえるような作品を描きながら、実はすでに50に手が届きそうなおやじだったんですね。
その後私は、何度かやなせさんにお会いする機会があったんですが、やはり気さくな、お話好きなおじさんでした。)

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写真は、私が1967年に購入したまんが集「無口なボオ氏 やなせたかし著」より(当時の暮らしは、氏曰く「本当にきつかった」とのこと)

そして後で知ったのですが、やなせさんはペイネを師と仰いでいたんですね。(やなせさんによれば「勝手に」師と仰いでいたとの事で…)
そういえば当時の画風や詩的な世界観はなるほど共通している!と思い当たる点が多々あります。

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ペイネが「恋人たち」を最初に描いたのは、1946年、戦争の影響でペンも便せんも手に入りにくい時代だったそうです。

戦地から帰還したやなせさんも、絶対的な正義なんてあるのか?あるとすれば人を飢えさせない事だろう、と感じたらしいです。
その体験が後の「アンパンマン」につながる訳ですが、飢えとは心の飢餓も意味するんでしょうね、たぶん。

ユーモアとメルヘン、ポエジーや風刺は、戦争を体験した両氏にとって、失ったものを取り戻し、そして育て伝えて行くために、かけがえのないものだったのでしょう。

※ちなみに、こちらも興味がございましたらご覧ください。

ペイネ美術館(軽井沢町)
https://www.nagano-museum.com/info/detail.php?fno=77
http://www.karuizawataliesin.com/look/peynet

「やなせたかしとレイモン・ペイネ」展 〜愛とユーモアとメルヘンと〜
(過去に開催されたイベントの告知ウェブページです。)
http://www.karuizawataliesin.com/archives/news/450

 

 

 

 


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