加藤周一   Kato,Shuichi

Posted on 2017-06-20 by nakajima

メンズ・ファッションの世界では知る人ぞ知る名物オヤジ。仙台在住デザイナー加藤周一さんの作品をちょっとだけご覧下さい。

「オーナーの私自身がこの店の一番のファンであり続けられる、そんな店を作りたい」
そんな思いで小さな店を構え、1980年より一貫して頑固かつ気ままなモノ作りを続けているといいます。

今回は、仙台の繁華街をちょっと過ぎた東北大学の近くにある、加藤さんの店を訪ねました。
そしてコーヒーを飲みながら、楽しいお話を伺ってきました。

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Q:「加藤さんの店にはよくパッチワークの品物がおいてありますね。これ、向きを変えたり、いちいち加藤さんがディレクションするんですか?」

A:「そうですよ。生地そのままじゃ面白くないじゃない。」

Q:「縫製してくださる職人さん、いやがるんじゃないですか?」

A:「そう、やりたくないよね。面倒だもの。できればやりたくないから、職人さんは言葉巧みにやらない方向に持って行こうとする。
でも、そう言われるのは長い付き合いだから、もうわかってる。職人さんは言うよね、そこまでする意味が分からない…とね。

でも、やる価値があるかどうかは私の価値観だから、あなたがどう思おうが構わない…と説得する。意味は、着てくれるお客さんに解ってもらえればいい事でね。」

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Q:「最終的には、やってくれるわけですね。すごいですね…このやりとりを、何年もず〜っとやってるわけでしょ?
いいかげん、やめそうなものだけど、すごい信頼関係ですね。服だけじゃなく、靴もそんな調子でデザインしてるんでしょ?」

A:「日本では人件費が高いのにね…感謝してますよ。ほんとに!
お客さんは普段、ビジネスマンとして至極まともな格好をしてるわけですよ。そんなお客さんはせめてプライベートでは、おもいっきり楽しもうとしてますからね…。だからこっちも真剣になりますよ。」

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生地を縫い合わせて作ったパッチワークのオリジナルタイ。

 

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ひょっこり来店した学生さんと楽しそうに話す、店主の加藤さん。

 

ありきたりのシャツではおもしろくない」そこで、ずっと前に三越で仕入れた和服の生地を使うことを考えたらしい。 肌触りがとてもいい生地です。

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近頃世の中、どうも元気が無い。「たのしいもの作りたいね」そんな事を友人と話し合っていた矢先、アメリカ製の楽しいプリントの生地を見つけた。気に入ったのでベストを作った…とのこと。

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実はわたし(中嶋)、ファッションの事はさっぱりわかりません。
そこで、後日、加藤さんのファンの一人から(どこに魅了されてるのか)お話を伺いました。

 

Q:「加藤さんって面白い服作るけど、ふざけてるって思われませんか?」

A:「え?…加藤さんは、とても真面目ですよ。
そして、ひたむき…。そのひたむきさが洋服の物作りに現れてますよ。
日本の紳士服飾界のレジェンドさえ、そう評価してます。

とにかく基本に忠実ですね。徹底的に基本が、身体に染み付いてます。
ですから、十人十色………万人の要求に対しても、それぞれに合った提案が出来るんです。」

 

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Q:「基本っていうと…?」

A:「加藤さんは、常々、基本はあくまでも、ドレスありき!…と、いっていますので、当然、スーツ、ジャケット、パンツ等の、重衣料はごくごく当たり前に、且つ実に、格好良く作ってくれます。

でも、ここからが、正に、私が更に加藤さんマジックのどツボにはまった要因ですが…
当然、加藤さんご自身も着ていますが、とにかく春から夏にかけての、ベストや、パンツのあの、派手な色柄を、これまた絶妙な感じのバランスで、提案してくださる方は、服飾業界広しと言えど、加藤さんしかいないです。

そうですね…唯一無二の希代の存在だと、私は真面目に思ってますよ!
とにかく加藤さんは、世界一のオールラウンダー…正に、それだと、思いますネ。」

Q:「あの…もういいです。もうわかりました…(タジタジ…汗)」

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パッと見、何の変哲もないネクタイだが、ウラを返すと美女が「ププッピドゥ〜♪」と微笑んでくれる。生地はアメリカ製。 限定品として作成したが、すぐ売り切れてしまった。惜しいかな、手間がかかるのでまた作る予定はないとのこと。

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A:「中嶋さん、あのね…ついでに言うと…
加藤さんのことを、良く理解してないお客様からしますとね、上っ面だけで、イギリス系のお店だとか、トラッドのお店だとか、言いますが……あくまでも、それはベースにしてるということ。

トレンド、流行を追い求める洋服作りは決してしませんが、個人的にこの10年くらいの、加藤さんの物作りを見ていますとね…、実に絶妙な塩梅でその時代 時代のトレンド・空気感を上手く取り入れていると思いますネ!

僕はたまたま東京に住んでますけどね、で、加藤さんは、たまたま 仙台に住んでるだけでね…彼って滅茶苦茶、凄いんですよ。」

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ダッフルコートとは、もともと北欧の漁民が粗野なフェルト生地を使用し、船上の作業の為に着用したもので、ボタン(留め具)は麻ひもとトグル(浮き)でできていた。留め具は片手で脱着しやすく前合わせも風向きによって変えられ、まさに合理的な作業服。後に、イギリス海軍が甲板作業のため採用。戦争が終わって払い下げられた物が世に出回り普及していった。優れた機能性はしだいにファッションの定番となってゆく。 …そんなダッフルに、敢えて掟破りを犯した作品。掟破りといっても本来の機能と利便性はそのままキープ。 生地を撥水加工の綿素材を使用。綿特有のこまいシワがお気に入り。

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こちらは、デニム。裏地にキルティングを施し保温性とボリューム感を出している。 中途半端に思う方もいらっしゃるかもしれないが、「キホンはしっかり押さえつつ組み合わせは着る人のパーソナリティー(個性)に任せられる、それが僕の服づくりのモットー」…とのこと。

 

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衿(えり)がないジャケット。カラーレスジャケット、あるいはカーディガンジャケットと呼ばれ、今ではほとんど見る事ができない化石のようなものです。 カーディガンジャケットというように、リラックスできて、かつドレス感が保てる「大人の服」です。一度すたれたもの、イコール悪いものではない。 ブリック流に、もう一度よみがえらせたいと考えて作ったのがコレ。

 

…う〜〜む、なるほど…ファッションに疎い私にはよくわからないけど…
まじめに頑固に作ってる、という事はよくわかったお客様の言葉でした。

そして、ファンあってのモノ作り…これも信頼関係ですね。

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単なるディスプレイに見えますが,店主がモニターとなって毎日どれかを店内で履いています。 ですから、よく見るとヨゴレもキズもあります。(服や靴は生き物であり実用品ですから…とのこと)

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ある映画のワンシーンに登場した麻のサファリジャケットと布のブーツのファッションがヒント。(エジプトあたりの砂漠なので砂が入らない布のブーツを履いている) インスパイアされ、革とのコンビでオリジナルブーツを作ろうと考えたとのこと。夏に履くブーツなんて、ある意味ムダかもしれませんが、そのムダこそ、ブリックおやじが好きなモノらしい。

 

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加藤氏作ジャケット着用の日向寺太郎監督(第16回上海国際映画祭にて) http://www.bunkatsushin.com/news/article.aspx?id=77007

そういえば加藤さん、こうも言ってました。

「むかし若い頃(会社勤めの頃)企画を持って行くと、よく『それって。売れるの?』ってよく言われたんだよね。
でも、ぼくは売れるものには興味がなかった。売れるものじゃなく、自分が売りたいと思えるものを作りたいと常々思ってた。だから会社、貧乏覚悟でやめちゃったんですよね…(笑)」

中嶋記

s.kato

加藤周一氏 近影 〜JAPANESE DANDY MONOCHROME ジャパニーズダンディーモノクローム大型本より(万来舎刊 プロデュース&ディレクション:河合正人、写真:大川直人)〜

 

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ブリックメンズクロージング http://brick.knoxox.com/


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