ヒロさんのユメ
Posted on 2013-07-25 by nakajima
目に見える物を描く必要性から解放されたアートがある….そのアートとは全く異なった環境の作者によって作られたストーリーとの組み合わせはどうだろう。。。そう、音楽を聞きながら童話にふれるような、そんな試みです。Midori McCabeさんのアートと中嶋徹氏によるメルヘンの世界へようこそ…
Hiro’s Dream
Image by Midori McCabe Story by Tohl Nakajima 中嶋 徹
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ヒロさんはさびしい人です。
友だちもいません。
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でも今夜は、
いつもとちがう事がおきるような予感がします。
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「ここはどこなんだろう?
なんでこんなに星がでているんだろう?」
ヒロさんはひとりごとを言いました。
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こんなキレイな星空ははじめてなのです
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すると、
むこうから一ぴきのキツネがやってきました。
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キツネはヒロさんを見ると、
うれしそうにかけよって来ました。
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「なんだ、うるさいキツネだなあ。」
そう言ってヒロさんはキツネをけとばしてしまいました。
キツネは「キャン」といって
にげて行きました。
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今度は、
とてもキレイな女の人があるいて来ます。
女の人はとてもキレイな声で
歌をうたいながらあるいてきます。
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ヒロさんは、
こんなにキレイな女の人ははじめてなので、
ドキドキしてしまいました。
ヒロさんはこまってしまいました。
でも本当は話しかけたいんです。
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「どうしようか。思いきって話かけようかな。」
そんな事を考えてモジモジしているうちに
女の人はヒロさんを見て、
ほほえんだだけで行ってしまいました。
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ざんねんなような、
へんな気もちになりました。
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白いヒゲのおじいさんが
やって来ます。
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おじいさんも
ちょっとほほえんだだけで
行ってしまいました。
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すると、
今度はむこうがわに、
かるく光っている所が見えます。
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たくさんの人の声がきこえます。
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そこへ行ってみると、
みんなたのしそうにうたったり、
おどったりしています。
さっきのキツネもいます。
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でも、それは本当はキツネではなく、
ヒロさんが子どものころかっていた子犬のポコでした。
さっきのキレイな女の人もいます。
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でも女の人は、
よく見ると
ヒロさんのお母さんの若いころのすがたでした。
女の人は、さっきと同じように、
やさしくほほえんでいます。
さっきのおじいさんもいます。
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そのおじいさんは
去年亡くなったばかりの
ヒロさんのおじいさんでした。
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ポコも、
お母さんも、
おじいさんも、
みんなやさしい目で
ヒロさんを見つめています。
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「なんだかへんな気分だなあ。
まるでユメを見ているような気分だ。」
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ヒロさんは
そこで目をさましました。
やっぱりゆめを見ていたのです。
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ベッドの中からまどを見あげると、
朝日がまぶしくかがやいています。
ヒロさんの心は、
なつかしさとやさしい気もちで
いっぱいになりました。
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その時ヒロさんの目から、
なみだがひとつ、
ポロッとおちました。
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( お し ま い )
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抽象絵画とは、現実の再現(写実)を行わず、具体的な対象(自然や物)を描かない絵画だといわれます。
純然たる造形要素である点、線、面(色面)、幾何形体によって描かれ、現実に依拠しない「自律した絵画の世界」を表現するアートですね。
抽象絵画において色と形は画家の想像力と知性によって創り出され、現実の事物を描写する役割から解放されたものといえます。
美術は、直接感覚に訴え物語を語る必要のない音楽のようなものでなければならない…..カンディンスキーの考えと言われています。
物語を語る必要性から解放された音楽や絵画….そこから感じ生まれる、物語や詩があってもいいだう。。。。
全く、異なった環境や作者によって作られた文章との組み合わせはどうだろう。。。。
そう、音楽を聞きながら童話にふれるような、そんな試みをやってみたいものだな。。。
そこから、生まれたのが今回の企画でした。
アートはアメリカ在住の作家Midori McCabeさん。ストーリーは東京在住の中嶋徹氏による創作童話。
抽象絵画をもっと親しめるものに….。親子で楽しめる抽象絵画の絵本があってもいい….。Midori McCabeさんも、この考えに共感してくれた事がスタートでした。
また、新たなストーリーでチャレンジしてみたいものです。
(Yoshiyuki Nakajima)
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