黄色い涙
Posted on 2021-07-22 by nakajima
かつて「黄色い涙」というテレビドラマがありました。
1974年、NHKの銀河テレビ小説というシリーズで20回連続、約1ヵ月間放映された番組です。その作品のタイトルバックのイラストが素晴らしく、キャラクターの捉え方がとても優しく印象的でした。
作画は永島慎二氏で、もう47年前の作品という事になりますが、是非ご覧いただきたいと思います。
イラストは私がかつて購入した書籍(ドラマ脚本)「黄色い涙/市川森一著・大和書房※」の紹介を兼ねて、そこから引用しました。
(※この書籍、現在は絶版となっていますが、古本としての購入は探せば可能かもしれません。)
「黄色い涙」の原作は「若者たち(シリーズ黄色い涙)」。
永島慎二作の漫画で、1968から70年にかけて雑誌(漫画アクション)に連載されたものです。
アパートの小さな1室で共同生活をすることになった、純粋で貧乏な4人の若いアーティストの青春を描いた作品で、永島作品の信奉者だった俳優の森本レオ氏がNHKに企画を持ち込み、大学の先輩であった市川森一氏に脚本を依頼したとのこと。
私は原作本は何冊も持ってるんですが、このドラマもまた大好きで、学生寮のテレビの前に陣取って見入ってました。
(当時、私はアートを続ける事をあきらめかけていた半端な貧乏学生でして、テレビなど持てる身分ではありませんでした。)
個人所有のテレビではないので、当然毎回見る事は叶わず、気が付いたらシリーズが終了していて、とても悔しい思いをしたわけですが、いまだに自分自身を見ているような強烈なノスタルジーを、あのドラマの世界に感じるのです。
主演の森本氏も原作の漫画をみた時「あっ、おれがいる…」と思ったらしいのですが、彼曰く「僕たちの青春と呼ばれる時代は、実は永島さんの憧れた青春を、たどたどしい足取りで懸命に追体験していったものなのです…。」
漫画がNHKドラマの原作になること、それは当時非常識な事だったようですが、テレビドラマとして「黄色い涙」は結果かなり好評だったようです。
番組終了の2年後の1976年、ガロで有名な青林堂から原作の「若者たち」が「黄色い涙」というタイトルで出版されます。(中に掲載されている番組制作の裏話も、とても熱の入ったいい文章です。)
そしてさらに、その8年後の1984年、10年前のNHK放送時のシナリオが「黄色い涙(市川森一著)」として出版されます。
市川森一氏は、その著書のあとがきで、このように語っています。
永島慎二さんの漫画には、どれも60年代から70年代の、新宿の雑踏のにおいがする。
永島さんの描いた「新宿」は、いまは、どこにもない。
永島さんが愛した作中のさまざまな人々も、いまは、どこかへ消えてしまった。
だから、いまもって彼の世界を好きだという者は、遠い蜃気楼の町を慕う旅人の空しさを味和わなければならない。
…(これは抜粋ですが、とてもいいあとがきでした。)
当時ドラマ化にあたって市川氏が選んだテーマソングも素晴らしいです。
↓ ↓ ↓
https://www.youtube.com/watch?v=bnid7StutQs
…
1974年にテレビドラマ化され、原作漫画も再販され、10年後にシナリオも出版された「黄色い涙」ですが…更に尾を引きます。
14歳の思春期にNHKのドラマ「黄色い涙」を見、永島慎二氏の漫画にふれ、ぜひ映画にしたいという監督が現れるのです。「のぼうの城」などで知られる犬童一心監督です。
犬童監督のもと、人気グループ嵐のメンバー5人が主演(二宮和也が主人公)を務め、テレビ放映から33年後の2007年に映画として復活し、60年代の昭和を生きる若者の映画として「黄色い涙」は再び若者の注目を集めたのでした。
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